『傲慢と善良』辻村 深月
婚活や恋愛をテーマにしながらも、人間関係の奥深さや、”自分を知ること” の大切さについて考えさせられる物語。
読み終えた後もしばらく心に残る本でした。
特に印象に残ったのは、「傲慢さ」と「善良さ」が同じ人の中に共存するということです。
「皆さん、謙虚だし、自己評価が低い一方で、自己愛の方はとても強いんです。傷つきたくない、変わりたくない。──高望みするわけじゃなくて、ただ、ささやかな幸せが摑みたいだけなのに、なぜ、と。
辻村 深月. 傲慢と善良 (朝日文庫) (p. 118). (Function). Kindle Edition.
私たちが持つ「本当の自分を見せるのが怖い」という心理を的確に表しているように感じました。他人と比べて落ち込む一方で、「自分はこんなはずじゃない」と無意識に思っている。謙虚さと自己愛のせめぎ合いが、現代の人間関係を複雑にしているのではないでしょうか。
この人たちは──、傲慢なのではないか。 真実は、もう三十過ぎの立派な大人だ。その彼女の歩む道や選択にすべて口出しし、自分たちの手元から出すべきでなかったと思うのは、親だとしてもあまりにも傲慢なのではないか。 ──結婚するまでは、真実のことは私が責任もってこの家で見るって決めていたのに。
辻村 深月. 傲慢と善良 (朝日文庫) (pp. 135-136). (Function). Kindle Edition.
この部分は特に心に刺さりました。
親が子どもの幸せを願うのは当然のことですが、それが過剰になると「子どもの人生を親が決める」という傲慢さにつながる。この本では、親の期待に応えようとすることで「自分がない」状態に陥ってしまう人の姿が描かれていました。
さいごに
『傲慢と善良』を読んで、「本当の自分を知ることの難しさ」を改めて実感しました。
私自身、自分の善良さを信じているつもりでも、どこかで「傲慢」な考えを持っていることがあるかもしれない。誰かに期待すること、期待されることの中で、「自分は本当に自分の人生を生きているのか?」と問い直す機会になりました。
人はみな、傲慢でありながら善良でもある。この矛盾と向き合いながら、どう生きていくかを考え続けることが大切なのかもしれません。
『傲慢と善良』辻村 深月
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