『ザリガニの鳴くところ』ディーリア・オーエンズ

『ザリガニの鳴くところ』ディーリア・オーエンズ

1969年ノースカロライナ州の湿原でチェイスという男性の遺体が発見されます。

村の人々から湿地の少女と呼ばれる、湿原に1人で住む主人公の少女、カイアが犯人と疑われます。

物語は、過去の1952年、カイアが6歳の頃、母が家から出て行ってしまい、そこから大自然の中で、成長していく様子と、事件の起きている時を行き来しながら展開していきます。

以下ネタバレを含むあらすじと感想です。

 

 

 

 

 

 

 

 

湿原の小屋に住んでいたカイアの一家は、母親が出て行き、父に暴力を振るわれ耐えられなくなった兄弟たちも次々に姿を消し、父とカイア2人に。

カイアを抱き留めてくれる湿地はカイアの母親のような存在となっていきます。

収入は父の障害者手当だけで、学校へは1度行ったきりで字も読めません。

お酒を飲まなければ、父は暴力を振るわず、一緒に釣りをしたりもしました。

そんなある日、母から手紙が届きます。

字が読めないカイアは父に手紙を渡しましたが燃やされてしまいます。

カイアはこっそり燃え残ったものを瓶に入れそっとしまっておきます。

そして酔っ払って帰って来た父と、その後2度と一緒に釣りに行けることはありませんでした。

徐々に父が小屋に帰ってくる回数は減り、ついに帰って来なくなります。

お金がないため、ムール貝を掘り、ジャンピンという給油屋さんに買い取ってもらい生計を立てます。

ジャンピンの妻、メイベルはカイアのために教会で服を集めてもらったり、野菜の育て方を教えてくれます。

14才になったカイアは文字も読めず、数も数えられませんでしたが、鳥の羽根をプレゼントしてくれたテイトという少年から読み書きを教えてもらいます。

カイアは言葉がたくさんのことを表せ、いろんな意味が詰まっているということに感動し、熱心に勉強し、詩を作ったりするようにもなります。

カイアはテイトになぜ、読み書きを教えてくれるのか、彼女はいないのか尋ねると、彼女は今はおらず、ここで静かに過ごすのが好きと答えます。

村の人々が湿地の少女を呼び、噂したり、話を作りあげたりしているのを知っていて、たったひとりで生きているカイアを気の毒に思っているということは打ち明けませんでした。

また、失った妹への愛情と、女の子に抱く熱い想いが絡みあった感情を持っていました。

そして、2人は恋人同士となります。

テイトはカイアの元に行く時、湿地の生き物や生物学の本を持って行きました。

カイアが生物学の本の中に探していたのは、なぜ母親が子どもを置き去りにするのかという疑問を解いてくれる言葉でした。

テイトは大学へ行くため、しばらくカイアの元を離れることとなり、必ず戻って来ると約束しますが、戻ってきませんでした。

再び孤独を味わうカイアですが、標本を採集し、絵を描き続けました。

カイアのコレクションは、科学と芸術が絡みあい、洗練されていきます。

小屋の至る所に、知識と美が溢れていましたが、寂しさも増します。

19歳になったカイアは、村の遊び人の青年、チェイスと恋人同士になり素敵なピクニックをしたり、火の見櫓という、湿地を高い所から見渡せる場所に連れて行ってもらったりします。

ですが、チェイスはクリスマスは村の人たちと過ごすため、カイアひとりで寂しく過ごします。

チェイスが来るのを待っていたカイアはボートの音が聞こえたため、小屋から飛び出して行くと、そこにいたのはかつての恋人、テイトでした。

テイトはカイアのコレクションを見て、あまりの素晴らしさに驚き、出版することを勧め、出版社を探してくれることとなります。

結婚しようとまで言っていたチェイスは、他の女性と婚約したという記事を見つけ、再び孤独を味わうこととなります。

それから1年以上が過ぎ、「東海岸の貝殻」というカイアの本が出版されます。

その本を見た、兄のジョディがカイアを探して小屋までやって来て再開を果たし、2年前に母が亡くなったことを聞きます。

ジョディが母の姉妹がいうには、母が逃げて来た時は精神がボロボロになっていたそう。

ある日、チェイスがカイアの元へ行き、犯そうとします。

殴られながらも必死で抵抗し、カイアは逃げますが、追いかけて来ないかと恐怖に怯えます。

その時、母が逃げて、2度と戻らなかったた理由を理解します。

カイアは、チェイス殺人の容疑で逮捕され、2ヶ月監房に入れられますが、無罪となります。

テイトはカイアにプロポーズし、一緒に暮らします。

カイアが亡くなり、アマンダという感傷的な詩を読む詩人はカイアだったことを知ります。

そして衝撃の詩を見つけ、驚きのラストを迎えます。

 

ネグレクトや人種差別や女性差別、環境問題の要素もあり、ミステリーでもあり、内容がとても濃い1冊でした。

湿地の情景や、あらゆる生物の生き方が繊細に描かれています。

自然界の成り立ちをじっくり見て、自然と共に生き抜いて行くカイアの逞しさにも惹きつけられます。

カイアの書いた本を読んでみたいと思ってしまいます。

カイアの目を通してみる生き物たちの生態がとても面白く、生物学って面白いんだなと思いました。

 

時折登場していたアマンダの詩は、胸にグッとくるものがありました。

特に印象的なのは

「おぼろな月よ 歩く私の

あとをついてこい

地上の影にも乱されることなく

その光を投げかけて

そしてともに感じてほしい

沈黙した肩の冷たさを

月よ あなただけは知っているだろう

孤独によって一瞬はどれほど長く

はるか遠くまで

引き伸ばされていくことか

ときを遡るなら

砂浜からその空までは

ほんのひと息でたどりつけるというのに」

という詩で、深い孤独と自然と共に生きるカイアの心の中を美しくと同時に、とても哀しく表現されていました。

1人で生きるというのはどれほどの孤独なのでしょう。

 

タイトルにもなっている「ザリガニの鳴くところ」というのは、茂みの奥深くで、生き物たちが自然のままの姿で生きている場所のことのようです。

ザリガニに鳴き声はあるのでしょうか?

ザリガニの鳴くところに住むカイアが、アマンダとして地元の出版社に詩を投函していたので、それが声にならない鳴き声をあげていたということなのでしょうか?

舞台となっている湿地はディズマル湿地をモデルにしているようです。

訪れてみたくなります。



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