『腸と森の「土」を育てる 微生物が健康にする人と環境』桐村里紗

『腸と森の「土」を育てる 微生物が健康にする人と環境』桐村里紗

人にとって最も身近な自然環境は「腸内環境」であり、そこは人が根を下ろす「土」にあたる。

近年明らかになっている腸内環境と心身の不調との関連について、最新情報や人と地球の土を同時に改良する食べ物の選択の重要性と具体的方法を「プラネタリーヘルス(人と地球は別々な存在ではなく、相互依存関係にあるという考えを基盤に、多様な生物が生かし合う生態系を維持し、人を含めた地球全体の健康を実現すること)」の観点から教えてくれる。

近代農法や畜産が環境に与える甚大な影響と、それを解決する農業や食の未来について書かれており、とても勉強になり、読み返しながら日々取り入れていきたいと思う内容であった。

 

以下は、私が重要だと思ったポイントの記録。

 

 

 

 

腸内環境が悪い人は、吸収不良によってミネラル不足になりやすい。

腸内に暮らす共生菌の由来は、私たちの祖先が土壌から取り込んだ細菌のため、土作りが得意。

人の消化管には、デンプン・タンパク質・脂質を分解する酵素が搭載されているため、腸内細菌に任せたいのは、人に分解できない植物の多糖類(食物繊維などのこと)の分解。大腸内の腸内細菌叢の遺伝子を調べると、人が代謝できない多糖類をエサとして分解するものが多いため、食物繊維を含む食品を食べることが土壌改良の基本となる。

多糖類をエサにする腸内細菌は、ビフィドバクテリウムや酪酸菌など、人に有用な短絡脂肪酸などの有機酸を分泌する発酵菌。これらの有機酸が、腸を弱酸性に保ち、有用菌が暮らしやすく、腐敗菌が暮らしにくい環境を作る。

一方で、多糖類を分解する酵素が少ない細菌は、単糖類(ブドウ糖や果糖)、砂糖などの二糖類、タンパク質、脂質、アルコールなど、現代的な加工食品や欧米化した食生活に多く含まれる栄養素を分解し、活性酸素をも利用して呼吸する。その結果、炎症や発がんの原因になる、悪臭の毒ガス・硫化水素や二次胆汁酸、動脈硬化を引き起こすTMAO、アセトアルデヒドなどの毒を産生する。

基本的に腐敗が起こると毒ガスが出るため、おならが臭くなる。これが、土壌の良し悪しを知る方法。

腸内細菌が生み出す有機酸の働き

・腸内環境を整える

・便秘の改善

・腸のバリア機能を改善する

・免疫機能のバランスを整える

・肥満や糖代謝の改善

・脳機能の維持

・発がん物質の抑制

 

成熟した土には、二酸化炭素や一酸化窒素などの、温室効果ガスになる炭素や窒素を保持する力がある。空気中の窒素や二酸化炭素などを、窒素化合物や炭素化合物に変え、土中に保持することを「窒素固定」や「炭素固定」という。

窒素は、植物の成長にとって重要。

マメ科の植物の根に共生する根粒菌は、空気中の窒素をアンモニアに変えて植物に供給している。

明治から昭和にかけて、水田の地力を回復させるための重要な裏作として、レンゲは意図的に蒔かれてきたが、窒素を含む化学肥料に置き換わったため、この化学肥料が、土壌生物の働きを乱し、地力低下の大きな原因となり、過剰な窒素による温室効果ガス排出や水の生態系破壊を引き起こしている。

窒素や炭素を土に固定できる植物の根と微生物の共生は、大気中の温室効果ガス削減のためにも注目されている。

 

根圏微生物においてキノコの仲間・菌類も植物と土を生かすために必須。

根圏細菌は根の周りから離れることができないが、植物の成長に必要な水やミネラル分は、土中深く、また、太い根が入り込めない隙間にある。そこで菌類である菌根菌が活躍する。

菌根菌の菌糸は、植物の根に菌糸を刺し、もう一方をぐんぐんと土中深くに伸ばして、栄養と水を吸収する。菌糸を輸送パイプにして土中の栄養と水を植物に運搬する。

 

豊かな土はフカフカしており、健康なうんちもフカフカしている。

腸内細菌が活躍して作られるうんちは、適度な水分と適度な空気を含み、適度な形を保ちプカプカと水に浮く。

 

微生物と根が作る神経ネットワーク

土の中で菌根菌の菌糸と植物の根が作るネットワークは、森全体を知的生命体として生かす。

森林生態学者のスザンヌ・シマード博士によると、森の土中は、インターネットや神経ネットワークのように接続した菌根ネットワークが形成され、木々同士が双方向的に情報交換や栄養の受け渡しをしている。森には、マザーツリーといわれる母なる大樹があるが、マザーツリーは、菌根ネットワークを通じて、日陰にあって栄養が十分に行き届かない幼樹や稚樹に栄養を育んでるとう。

さらに、マザーツリーが何らかのストレスを受けると、その情報をネットワークを通じて森中の木々に伝え、木々のレジリエンスを高めることもわかっている。

腸も、「第二の脳」と呼ばれる独自のニュートラルネットワークを持っている。

腸と脳のインタラクティブな情報交換を、腸脳相関といい、脳と腸は自律神経系、ホルモン、サイトカインなどの情報伝達物質を介して密に連絡し合っている。

人にとっての常在細菌の役割

・人に利用可能な栄養素を作る

・糖や脂質などのエネルギー代謝を維持する

・薬物の活性化・不活化

・消化器機能の維持

・全身の粘膜や皮膚=防御壁を維持しながら外敵から守る

・免疫機能を維持・調整

・内分泌を調整

・自律神経系を調整

・メンタル・脳機能を維持・調整

 

あらゆる常在細菌には、常在ウイルスが感染している。細菌に感染するウイルスをファージという。

ファージを使った細菌感染治療を「ファジーセラピー」という。抗生物質では困難なクロストリジウム・ディフィシルや、多剤耐性菌の治療への応用が期待されている。

 

生まれる前から、自分の生活習慣に関わらず、母体がストレスを受けると、子宮内〜膣内の細菌叢が乱れ、胎児期から出産時にかけて母親からもらう初期の細菌叢が乱れることになる。

さらに、胎児期にはのうや神経系の発達が盛んであるが、母体のストレスは胎児にも伝わり、生涯のストレスレベルを高めてしまう可能性がある。

胎児期にストレスや侵襲にさらされて、永続的に生理的・代謝的なプロセスが変化してしまうことを「子宮内プログラミング」という。

本来胎盤には防御機構があり、母体がストレスフルで、ストレスホルモンのレベルが高くても、胎盤でブロックされるはずだが、母体に低栄養などの精神的・物理的ストレス要因があると、胎盤の防御機構が働かず、胎児の脳に様々なストレスが記録され、それが生涯にわたり生理的な変化を引き起こす可能性がある。

周産期にダイエットをする妊婦も増えているが、リスキーだという声もある。妊娠中の夫婦喧嘩はもってのほか。

経膣分娩で生まれる場合、赤ちゃんは産道を通りながら母親の膣内フローラの乳酸菌をもらいつつ、頭を出しながら肛門にキスするような格好になって、最初の腸内細菌叢をもらう。これにたいし、帝王切開では、まず触れるのは母親の皮膚の細菌叢か病院の環境の細菌。やむを得ず帝王切開になってしまうことはあるが、諸外国では安易な帝王切開も行われているため、腸内細菌叢の生着の側面からも注意が必要。

母乳には、ビフィズス菌をはじめとした様々な常在細菌やラクトフェリンなどが含まれている。

経膣分娩で生まれ母乳栄養で育つと、赤ちゃんは1週間程度でビフィズス菌90%という腸内細菌バランスになる。黄色くてちょっと酸っぱい匂いがする健康的なうんち。

 

オーガニック野菜がブームになり、ギョウ虫などの寄生虫感染が少しずつ増えている。

寄生虫をカプセル化して内服することで自己免疫疾患を治療しようとする試みが行われている。

一方で、トキソプラズマは原虫は、人を操り、行動にも影響し、運動神経は鈍くなるものの、恐怖や不安が鈍り、行動が大胆になるため、事故率が高まる。

牛肉が最も環境負荷が大きいが、化学肥料や農薬を多用する近代の慣行農法の環境負荷も大きく、小麦や大豆、とうもろこしなどの穀物の環境負荷も甚大。

日本においては、米が、畜産以上のメタンガス発生源で、第1位となっている。

メタンガス低減は様々に実践されている。日本では、中ぼしというプロセスの工夫。世界的には水田に魚を放つユニークな取り組みや、土壌の微生物を活性化し、収量を上げながらメタンガスの放出を抑えるSRI農法やや、稲の品種改良や化学肥料や農薬に頼らずに、高い収穫を実現できる稲の栽培方法などの農法がある。

農村部ほど化学汚染している。

土に1種類の植物が並ぶのは「自然」ではない。

農村部のこどもの農薬汚染を警告している。

化学物質を解毒する力は個人差あり。

アメリカやカナダからの輸入小麦に大きな割合で、グリホサートが検出されている。

特に全粒粉で多く残留が認められている。

2020年、北海道大豆の7種類の調査で、ホクレン大豆にグリホサートの残留があった。

私も、時々ホクレンの豆乳飲んでた。

同様に富山県産大豆にも残留が認められた。

EU圏では禁止にしていく中で、日本では2017年にグリホサ-ト残留基準を大幅に上げている。

 

オーガニックフードを世界的なムーブメントにした、アリス・ウォータースが創設した、「エディブル・スクールヤード(食べられる校庭・食育菜園)」

アリスの食についての哲学の一部

旬のものを食べる、庭に食べられるものを植える、料理はシンプル 全ての感覚を活用、注意と敬意を持って食卓をセットする、みんなで一緒に食べる、食べ物は尊い、一緒に料理をする

このエディブル教育はカリフォルニアだけでも、4000以上の保育園から大学まで導入され広がっている。

 

耕すという行為を行う農法は、土の微生物をかき混ぜるため、土壌の微生物バランスは崩れ、温室効果ガスが放出されえる。

パタゴニアは、「リジェネラティブ・オーガニック(RO)認証」を創設。

既存のオーガニック認証を基盤にし、さらに土壌の健康、動物福祉、社会的公正(農家と労働者への公平性)が設けられている。 

 

ソニーコンピューターサイエンス研究所の代表取締役社長の船橋氏が、理論化、研究、実践している「協生農法(シネコカルチャー)。

協生農法とは人と自然を再接続し、環境負荷を減らし、人の営みによって積極的に自然以上に生態系を拡張し、環境を改善させる切り札となる。

耕起、施肥、農薬を使用せず、生態系の自己組織に任せ、有機農法で使用する有機堆肥や微生物資材なども使わないことがルール

農業は砂漠化の要因となっているが、アフリカの貧困国ブルキナファソでは、雑草すら生えない枯れた土壌に、協生農法を導入することにより、1年で生態系を回復させ、慣行農法と比較して40〜150倍の生産高を上げた上、コスト効率は10倍とされている。

さらに協生農法は軍手とスコップがあればできる。一般の家庭菜園から実践可能で、「協生農法実践マニュアル」や「協生理論学習キット」が公開されている。

「プラネタリーヘルスダイエット」人の健康だけでなく、人を含む地球全体を健康にすることを目指す。

2019年にイギリスの医学誌ランセットに発表された、人間の健康と同時に、持続可能な食糧システムを実現する解決方法として世界に掲示した食のガイドライン。

単一の穀物や、肉食を続ける人口が増えると、食糧需給は追いつかず、環境が完璧に破壊され、地球が崩壊してしまうと予測されている。

そのため、生物多様性を回復するために、単一の作物だけを田畑に植えるモノカルチャーに依存した食糧需給から離れ、農場や野生に依存する野生種や在来種なども含めて、何千種、何百万もの品種の動植物を食糧として取り入れ、農業による生物多様性を確保することを提案している。

こうした食物を食べることで、腸内環境の多様性も回復する。

 

腸内の土壌改良にはシンバイオティクス食を日々取り入れる必要がある。

シンバイオティクスとは有用菌を摂取する食品をプロバイオティクス、腸内の常在細菌を育む食品をプレバイオティクスといい、これらを組み合わせたもののこと。

それらを取り入れるために、摂取するべきものや、選び方、プラネタリーヘルスダイエットでの1日の食事の目安など、重要だと思うことがたくさん書かれていた。

自分の意識を日々保っていくためにも、何度も読み返したい。



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