『ハグとナガラ』原田マハ
女ふたりたびの物語です。
前書きに文庫化された理由が書いてありました。
アートの仕事をしている時や、作家になってからもずっと旅をしてきたマハさん。
40歳になり、フリーランスになったところ、友人から「旅に出よう」と誘われ女ふたり旅が始まったそうです。
マハさんと友人を「ハグとナガラ」というキャラクターに設定して、10年以上にわたって色々な媒体で発表してきたそうです。
ところが今年(2020年)は、新型コロナウィルスが世界中で大流行し始めたため、旅に出かけられなくなりました。
「ハグとナガラ」のシリーズを読み返し、こんな時期だからこそ、まとめて読んで、本の中で旅をして、笑ったり、泣いたり、ほっとしたりして欲しいと思い、文庫化されたそうです。
まさに旅に出かけられない今読むにはぴったりなストーリーでした。
以下はネタバレを含む感想となります。
「旅をあきらめた友と、その母への手紙」では、実家を離れて長年暮らしていたハグとナガラですが、ナガラの母が脳梗塞で倒れ、前々から楽しみにしていた旅行をハグはひとりで行く事となります。
旅館ではひとりで温泉に浸かり、きちんとドレスアップをし、ダイニングではもっとも華やいでいる中央にある、シェフが目の前のカウンターに案内され、食事を楽しみます。
そして翌日ナガラからメールが届き、ナガラのお母さんに向けて、とても美しところなので、元気になったら一緒に旅をしましょうと手紙を書きます。友人の母をも思う気持ちと。その手紙がとても温かく、素敵でした。
「寄り道」「波打ち際のふたり」では一生懸命働くことも大切だけど、寄り道、迷いながらでも時間を作り、大切な人と共に過ごしたり、したい事をするというのは人生においてとても大切。
親が年をとってくると、母と娘でいられる時間はだんだんと減っていく。仕事や旅などもどれも大切なことだけど、ひとりで過ごしてきたお母さんにふたりで過ごす時間を作ることは、きっとどんなことより大切ではないかというナガラの言葉にハッとしました。
日々の生活でバタバタしていますが、きちんと時間を作り、大切な人たちと会えるようにしていきたいなと思いました。
「遠く近く」ではハグが認知症でホーム入居している母へ、ナガラと旅してくると伝えても何も言わず、話を聞いていただけなのですが、出発当日の「いってらしゃい。」と言い、部屋を出て行くハグに手を降ってくれるシーンに涙しました。実家を離れて数年経つので、母からのいってらっしゃいの言葉を思い返さずにはいられません。
旅ができない今、ハグとナガラの旅先に私も行ったような気分になり楽しかったです。
そして母にすごく会いたくなりました。
時間を作って会いに行きたいですが、コロナ禍の今、簡単に会いにいけないのがもどかしいです。
早く会いたい人に会え、旅が楽しめる日々になりますように改めて強く思いました。
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