『雲を紡ぐ』伊吹有喜

『雲を紡ぐ』伊吹有喜

都内の高校に通っていたが、登校拒否となってしまった主人公の美緒。

頑張って登校しようとするのですが、お腹が痛くなって登校できないのです。

ある日、父に車で送ってもらい、学校まで行くのですが、すぐに帰ってしまいます。

そして大切にしていたホームスパンという布で作られた赤いショールがなくなっていました。

そのショールは疎遠となっている岩手県の染織り工房で働く父側の祖父母が美緒の初宮参りの時に作ってくれた物で、今でも頭からすっぽり被ったりし心を落ち着かせてくれる心のよりどころとなっています。

母にショールについて聞くも、「卒業してほしい」と言われたため、捨てられてしまったのだと美緒は考えます。

母とも分かりあえない関係であったこともあり、美緒はショールだけでなく、この家や家族からも卒業して欲しいのではないかと考え、家を飛び出し岩手へ向かいます。

そこで祖父とホームスパン作りの修行を始めることとなります。

 

雲のような羊毛が詰まった色とりどりの袋に飛び込むシーンがあるのですが、とても気持ち良さそうで羨ましくなります。

ふわふわの雲に飛び込むって夢ですよね。 

 

またストーリーの中で祖父は

「『大丈夫、まだ大丈夫』そう思いながら生きるのは苦行だ。人は苦しむために生まれてくるんじゃない。遊びをせんとや生まれけむ。・・・楽しむために生まれてくるはずだ。毎日を苦行のようにして暮らす子を追い詰めたら姿を消すぞ。家出で済んでよかった。少なくともこの世にはとどまっている」

「お前が笑う時、お前のなかのお祖母ちゃんが笑う。お前が泣くとき。横浜のお祖母ちゃんと同じ目が泣き、お前が学ぶときはお祖父ちゃんと同じつむじの下で頭が働く。お前が幸せならみんなが幸せだ。そうでしょう?」

などと胸にグッとくることを言っていました。 

また、芸術家でおしゃれな祖父の鉱物や絵本のコレクションもたくさん出てくきました。

ファッションイラストを描くジョルジュ・バルビエ

「ナルニア国ものがたり」

「野バラの村のものがたり」

画家のカイ・ニールセンの挿絵の「おどる12人のおひめさま」

祖父がホームスパンの話ではないかと思っている「水仙月の四日」

など調べながら読むと面白かったです。

美しい絵本だったので、手に取り読んでみたいなと思いました。

さいごに

本の表紙は青空に広がる雲の下、羊と赤いショールを纏った少女が描かれています。

読み終えた後には、美緒が心に思い描いていた風景のように思えてきます。

また、表紙をめくり、中のタイトルが描かれたページは真っ赤で目を引きます。

タイトル文字の背景は白くふわふわと描かれていて、この物語を表現しているようです。



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です