『超加速経済アフリカ LEAPFROGで変わる未来のビジネス地図』椿進
人類発祥の地とされる「アフリカ」。
13億人の巨大市場で次に何が起こるのか。
アフリカでは今、リープフロッグ(蛙飛び)イノベーションと呼ばれる現象が起こっています。
固定電話なしにいきなりスマートフォンになったり、例えばケニアのモバイルマネーは、携帯にチャージした通話料が、通貨のようにやりとりができ、現金に変えたり、預金もできたり、ローンも組めるのです。
年間の取引総額は4兆〜5兆円規模で、ケニアのGDP(国内総生産)の半分弱に当たる規模なのだそう。
日本もかつて急成長した時代があったため、日本人なら次に何が起こるのか答えを知っているとして、未来のビジネスを示しています。
この本を読むとアフリカに抱いていたイメージが一気に変りました。
まずはアフリカ大陸の広さに驚きです。
というのも、よく見る世界地図はメルカトル図法のため、高緯度の地域は実際よりも大きく見えてしまい、赤道付近にあるアフリカ大陸は相対的に小さく見えてしまうのです。
アフリカ大陸の南北の長さは約8000km、東西の長さは7400km。
東京から米国のシアトルまでの距離が7687km。
東京からドバイまでは7935km。
アフリカの南北の方が長いのです。
東京からムンバイまでは6738km。
東京からモスクワまでは7492km。
アフリカの東西はこれらに匹敵する長さなのです。
そして砂漠、暑そうと行ったイメージが強いのですが、赤道直下でも1年中夏の軽井沢だそうです。
一気に過ごしやすそうに感じられます。
次に年齢の圧倒的若さにも驚きます。
中位年齢という0歳から順に並べて超ど真ん中とされる年齢が、日本は48.4歳なのに対して、アフリカ全土では19.7歳です。(2020年)
若い人が多い背景には、医療環境や環境衛生が整い、乳幼児の死亡率が急速に下がったこと、人口を養える最低限の食料が確保できるようになったことがあります。
特にアフリカの中でも主要と述べられている国が4つあります。
南アフリカ、ナイジェリア、ケニア、エジプトです。
ナイジェリアでは、
「西アフリカにドバイを造る」というプロジェクトが進んでいます。
東京の千代田区ほどの広さ(約1000ha)の海が埋め立てられ、経済特区として無税・無関税となっています。
今後はホテルやショッピングセンターなども作られる予定。
埋め立ての造成予算は日本円で約2000億円とされ、日本の企業は全く関わっていないとのことで、筆者はとても残念なことだと述べています。
生産年齢人口とその国の経済のピークはリンクすると言われており、国が栄えるかどうかは生産年齢人口がどのくらいいるかが1つの重要な要素となります。
生産年齢人口の今まさにピークを迎えているのが中国、インドや中東が2040年頃、その後ピークを迎えるのがアフリカで、このピークは長く続くと予想されています。
しかしアフリカの都市化が進んでいるエリアと農村ではまだまだ差があるようで、国によっても都市化率はまばらです。
都市化が進むと、これからたくさんの人が都市に出てきますが、都市に出てくる多くの人は日雇いなどのその日暮らしの仕事が中心になっており、圧倒的に仕事不足のようです。
今のアフリカの最大の課題の1つは「都市にそれだけの仕事があるか」いう事です。
ここからはどのようにしてアフリカが豊かになっていったか。
電気は来ていなくても、スマホは持っているのです。
小型のソーラーパネルを使ったり、村の小売店での充電サービスを利用しているの出そう。
アフリカで1番のシェアのスマホは中国製。
東アフリカでヒットしている商品が、ソーラーパネル充電池、LEDランプ、充電用ラジオなどがセットになった、約23000円の物です。
一括では高くて買えないため、頭金を払い、モバイルマネーで、1日約50円の毎日払いをし、1年半程で自分の物になるという仕組みで購入するのです。
大きな特徴はプリペイドケータイです。
郵便も普及していない、住所もはっきりしない、銀行口座を持っている人は、ケニア全体でも3割弱のため、使った後からの回収が困難なためです。
小売り店やコンビニなどでチャージをする仕組みになっています。
また、サバンナでもアンテナが立つ理由は、中国のファーウェイやZTEなどの基地局メーカーに丸投げしていることで早く敷設できるようです。
椿さんはエチオピアで、トラックにローカルスタッフを3人、中国人が1人乗ったトラックが、1週間ホテルにも泊まらず、全てテントで寝泊まりしなから、基地局設置に奔走していた光景を見たそうです。
一人当たりGDPとライフイベントの相関について
最初の大きな目安として1000ドルのライン。日本では1966年前後。
スーパーマーケットやショッピングモールの開業が始まり、中古の車やバイクが普及します。
そして地方から若者が都市に流入して来ます。
都市化の始まりで、土地の値段もこのあたりから上昇します。
次は3000ドルのラインです。
日本では1972年頃。
外食のお店や大型ショッピングセンターなどができ、新車やカラーテレビ、クーラーが売れ始めます。
次は10000ドルのラインです。
日本でいうと、1980年あたり。
渋谷の109ができ、スーパーやデパートでお買い物するだけでなく、ちょっと変わった物が欲しくなり、新しい文化が生まれます。
海外旅行が流行し、やディスニーランドやスキー場などのレジャーが本格化します。
200000ドルのラインは、日本では、1987年前後です。
海外旅行者が500万人を突破し、安田火災がゴッホのひまわりを購入しました。
アフリカで10000ドルのレベルに達しているのは南アフリカのヨハネスブルグと、ボツワナ、リビアです。
日本は一足先に3000ドル、10000ドル、20000ドルをこの50年で軽々しているため、どのタイミングでどのような事が起きるかよくわかっているはずなのです。
ここからは、アフリカの先端技術についてです。
ルワンダには、イギリスのベンチャー「babylon/babel]が保健省と組み地域医療と連携してサービスを展開しているのは遠隔診断・AI診断です。
病院が少ないルワンダに、代わりのヘルスセンターという施設が50ヶ所あり、そのうちの30ヶ所を選び、そこの人をトレーニングし、モバイルAI(現在は実証中)やコールセンタでの診療、ナースでの診断、最後はドクターでの診断という遠隔診断の体制を作っています。
費用は日本円で1回20円ほどで、これもモバイルマネーで支払います。
AIドクターは専門分野が広い事も特徴です。
アフリカはドクターの数が少なく、専門医は限定されます。
感染症は詳しいのですが、癌や循環器系が詳しいドクターはとても少ないのです。
次は、サンフランシスコの企業「Zipline」。
ルワンダとガーナでドローンで血液や医薬品を運ぶサービスを展開しています。
自律飛行型ドローンで、自分で飛び、自分で戻ってきます。
最高時速は80km。
ルワンダでは平均15分で病院に到着し、パラシュートで血液などを落下させて、戻ります。
天候の影響が少なく、約1.8kgまでの製品を1度に配送できます。
血液を各病院にストックしておく仕組みが不十分のアフリカで、まして運ぶにも未舗装道路が多いです。
なんといっても輸血を必要とする機会が多く、アフリカ全体では、年間8億回もあるのです。
その半分程度しかできておらず、多くの人が出血多量でなくなっているため、必要とされているサービスです。
ドローンのベンチャーは世界中に数千社あるようですが、最も時価総額が高いのがこの会社です。
ドローンを飛ばすには様々な規制がある場所が多いため、アフリカで飛行実績を作っているようです。
次にアメリカの企業「Butterfly」です。
モバイル超音波診断機です。
スマホ直結型でクラウドに繋げ、遠隔診断やAI診断が可能です。
操作の研修を受けた人が操作をしてAIや専門医が診断できるようにするのです。
従来の機器では1台200万円程度ですが、こちらは約20万円程度で、売り切りではなく、サブスクリプションモデルを導入していたりもします。
AIはたくさんのデータ収集が必要なので、ここで、大量のデータを集め学習させています。
知らないだけで、どんどん進んでいる事に驚きました。
日本でもモバイルエコーによるAI診断などが導入される日がくるのでしょうか。
アフリカは医療テック市場が盛んで、民間企業による救急車歯医者プラットフォームや、デジタル化された医療保険会社などが成功しています。
アフリカにはすでに多くの企業が進出しており、アフリカは巨大な市場となりつつあります。
日本でも成功している企業がいくつかあります。
中古車のネット販売の「BE FORWARD」、サッポロ一番の「サンヨー食品」、化学メーカーでウィッグやエクステンションを作るのに欠かせないものを提供している「カネカロン」「味の素」など。
成功している理由は大変興味深い内容でした。
アフリカ版EUの構想「アフリカ連合(AU)」があったり、これからのアフリカに目が離せなくなります。
海外旅行ができるようになれば、アフリカ訪れてみたいと今まで以上に強く思いました。
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