『ブラック・チェンバー・ミュージック』阿部和重

『ブラック・チェンバー・ミュージック』阿部和重

主人公の横口健二。

2年半前に大麻取締法違反で捕まり、完成直後だった初監督映画がお蔵入りになった過去があります。

派遣のウェディングカメラマンとして働いていたある日、新潟の暴力団事務所の会長である、沢田龍介が、北朝鮮から密入国してきた女性を連れて押しかけて来て、仕事を持ちかけます。

仕事の内容は、ある映画評論の記事全文が読み通せる物の入手です。

依頼人は不明で、連れてきた女性が、密入国者だとばれないように注意しながら共に、3日以内に探しだせとのこと。

借金を背負っていた横口健二は、報酬に目がくらみ引き受けることとなります

同時期に行われる米朝首脳会談や、トランプの隠し子疑惑、諜報員たちの裏でのやりとりなどと並行しながら物語は展開していきます。

途中、仕事が打ち切りとなり、ハナコは日本に来ていなかったことにしなければいけないのですが、いつしか横口健二とハナコには愛が芽生えており、無事帰国させるため翻弄する展開になっていきます。

ヤクザやヘイト集団に追いかけ回されたりと、ハラハラドキドキで、無事帰国できたかもわからなかったのですが、後日、北朝鮮の映画撮影所を紹介する動画に、落書きだらけに市街地に、横口とハナコの相合い傘を見つけ、無事に帰国できたことがわかります。

 

 

横口健二のちょっと抜けた性格と、強引ですが、困った時には、助けてくれる、沢田龍介の会話が面白く、暴力的なシーンもありますが、程よいゆるさが面白かったです。

古書店員の熊倉リサ冷たそうなのに、優しく、そして何より頭のキレと、筋を曲げないような性格も清々しかったです。

完全に見た目のピンクに惹かれ購入した本で、中々の長編でしたが、スリリングな内容なので、一気に読み進めていて、まるでスパイ映画を見ているような面白さでした。

ちなみに、ブラック・チェンバーとは、1900年代の初めごろのアメリカにあった暗号解読をする政府機関のようです。

 



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