『愛なき世界』三浦しをん
大学の近くにある洋食屋の円服亭。
近くに会社もたくさんあるので、昼どきともなれば、幅広い年齢層の人々で店内はごったがえす。
住み込みの見習い店員の藤丸陽太は、男性が3人で女性が2人でやってくるグループに興味を抱く。
一人は、いつも黒いスーツを着ているが、ネクタイをしていない。殺し屋みたいな人物で、残りの4人は、ラフな格好。
藤丸は大学の先生と生徒かなと思うが、夏休みの真っ最中にもしばしばやってくる。
会話を聞いても、日本語なのに全く意味のわからないことを話している。
円服亭が出前を始めるということで、張り紙をしていたら殺し屋みたいな人が、お願いすることがあるかもしれないと、名刺を渡してきた。
そこれ生物科学専攻の教授をしていることがわかった。
出前の注文が入り、届けに大学まで行くと、グループのメンバー達がいて、植物学の研究をしていると知る。
そこからと出前を届けに行く時に、研究内容を聞いたり、顕微鏡を覗かせてもらったりしているうちに、恋愛に全く興味がなく、葉っぱの研究一筋の本村紗英に、恋心を抱くようになっていく。
以下ネタバレを含む感想です。
しかし、愛のない世界を生きる植物の研究にすべてを捧げると決めているため、自分も誰ともつきあわないと言われた。
藤丸は、愛のない世界を生きる植物をどうしても知りたいという、情熱を持ってコツコツと日々研究している本村を見て、1年近く考えて
「その情熱を、知りたい気持ちを、『愛』って言うんじゃないですか?植物のことを知りたいと思う本村さんも、この教室にいる人たちから知りたいと願われてる植物も、みんな同じだ。同じように、愛ある世界を生きてる。おれはそう思ったっすけど、ちがうっすか?」
と本村に言うシーンにはジーンときた。
『愛』とには、色んな愛があると改めて気付かせられた。
本村の研究命だけど、育てている植物は枯らしちゃうなどのちょっと抜けていたり、植物を愛するがあまり、植物の気孔のTシャツを着ていたりする、独特の感性を持つキャラクターが、面白い。
藤丸の明るくて、料理が大好きで、物事を純粋に捉える性格が見ていて、微笑ましく、清々しかった。
世の中の色んなことがわかっているのは、研究している人たちのおかげで、研究してる人ってすごいなと思わずにはいられない内容だ。
愛なき世界というタイトルだけれど、研究メンバーの人たちもそうだし、洋食屋の大将と藤丸の関係など愛に溢れている。
教授が大学時代に研究に行った友人を失ったことがあったため、研究メンバーが、ボルネオ島へ行くとなった時の、心配しすぎている様子もジーンとくるものがあった。
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