たくさんの言語で翻訳され、世界中で読まれているベストセラー小説なだけあり、とても良かったです。
唯一の肉親だった祖母を亡くし一人ぼっちになったみかげ。
祖母が通っていたお花屋さんでアルバイトをしていた雄一と祖母は仲が良く、祖母が亡くなったと知り、性別は男性の、外観は美しい母、えりこと一緒に暮らす家に住むことを提案します。
みかげは一緒に暮らし、心が和み、徐々に立ち直っていきます。
そして家を出て、料理アシスタントとして働き始めたある日、雄一から連絡が入るのですが・・・。
以下はネタバレを含む感想や印象に残った文章です。
窓辺の植物に水やりをしている最中にえりこさんがいった言葉で
「本当にひとり立ちしたい人は、何かを育てるといいのよね。子供とかさ。鉢植えとかね。そうすると自分の限界がわかるのよ。そこからが始まりなのよ。」
「人生は本当にいっぺん絶望しないと、そこで本当に捨てらんないのは自分のどこなのかをわかんないと、本当に楽しいことがなにかわかんないうちに大きくなっちゃうと思うの。あたしは、よかったわ。」
とあるのですが、とても深く、印象に残りました。
このキッチンに入っている『ムーンライト・シャドウ』というストーリーもとても良かったです。
「彼を失ったことは痛い。痛すぎる。」
「彼と抱き合う度、私は言葉でない言葉を知った。親でもない自分でもない他人と近くにいることの不思議を思った。その手を胸を失って、私は人がいちばん見たくないもの、人が出会ういちばん深い絶望の力に触れてしまったことを感じた。淋しい。ひどく淋しい。今が最悪だ。今を過ぎればとりあえず朝になるし、大笑いするような楽しいこともあるに違いない。光が降れば。朝が来れば。」
恋人を失う悲しみ、会いたくてたまらない気持ち。
その気持ちを思うと読んでいる私の心もぎゅーっと締め付けられました。
その人との何気ない日常での思い出など、残された人の身近に残されているため、悲しくなってしまいますが、それでもその今を過ぎれは朝はやってきて、前を向いて生きていこうとする姿が悲しいけど、美しかったです。
わたしの手元に置いておきたい1冊となりました。