『本心』平野啓一郎
舞台は自由死が合法化されている2040年の日本。
唯一の家族であった母を失った主人公の朔也。
リアルアバターとして依頼主の希望通りに行動するとい仕事をしていました。
貧富の差が激しい時代で、朔也は貧しかったのですが、母が残してくれたお金をはたいて母の生前のデータを入力したヴァーチャルフィギュアを作ります。
寂しかったのもありますが、母はもう十分と言い、生前に自由死を望んでいました。
朔也は認めていなかったのですが、結局は突然の事故で母は亡くなってしまいます。
自由死を望んでいた母の本心を知りたかったのです。
母の同僚の三好さんや、不倫の関係にあった作家の藤原さんから話を聞き、朔也の知らなかった母の事、そして、母が朔也に秘密にしていた衝撃の事実を知ります。
美好さんとの同居生活や、アバターデザイナーとして活躍しているイフィーとの出会いの中で人間関係を構築していき、自分の進みたい未来を見つけます。
孤独に突然死んでいくより、自分の愛する人に見守られながら亡くなる方が幸せ。
確かにそうなのかもしれないなと思うけれど、もう十分だという気持ちに心からなり、自分の周りの愛する人たちに理解してもらわないと難しいなと。
もう十分と言う気持ち、朔也の母は70歳を手前にして抱いていましたが、どのタイミングで感じるのか?
辛い生活だと、もう十分頑張って生きたと思うかもしれないし、たくさん長生きできて思うかもしれない。
自分の身の回りのことが自分でできなくなってしまい愛する人に迷惑をかけると考えてしまうと、思うかもしれないし、もう十分と思ってても、やっぱりまだ生きたいと思うかもしれない。
自分の本心ですら難しい気がしてしまいます。
愛する家族であっても結局は自分とは別の思いや考えを持った他者。
最終章のタイトルにもなっている「最愛の人の他者性」
最愛の人の他者性の中にある本心をどれだけ理解できるか。理解しようとすることができるか。
そして理解した上で、この自由死という選択を受け入れる事が愛なのか、反対し、考え直してもらうことが愛なのか。
深い内容でとても考えさせられました。
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