『あかずの扉の鍵貸します』谷瑞恵
大学生の朔実は、高校生の時に自宅の火事で両親を亡くしています。
遠縁だという高齢の不二代に引き取られ、一緒に暮らしていました。
大学生になっても不二代との同居は続けていましたが、不二代は病に倒れ、症状は悪化していきます。
ある日病床で、「どうしても、あかずの間がいるの」と頼み事をされます。
幻堂風彦、設計事務所、一級建築士という肩書きのある人物の名刺をもらい尋ねることになります。
訪れた幻堂設計事務所は、廊下のモザイクタイルや階段の手すりの装飾が凝っている古くて立派な洋館です。
金木犀の香りが漂う廊下を進んでいくと、階段が三つもあり、適当に選び上へ上がってみると、六角形の広い部屋に出て、壁にはそれぞれデザインや大きさの異なる扉が5つあったりと、迷路のように広がる部屋の数々に驚き、興味をそそられます。
この通称「まぼろし堂」には、訳ありげなミステリアスな下宿人を受け入れていて、あかずの間を貸し出すということもしていました。
朔実はそこに住み込み、社会人として働きながら、風彦の助手としても働き始めます。
あかずの間には時空を超えても、捨てずに敢えてしまっておきたい大切なものが預けられていて、いつか開ける時が来るかもしれない時のためになど、色んな人の思いが詰め込まれていることを知っていきます。
少しファンタジーでミステリー要素もありますが、秘密が明かされていき、なんだかほっこりするようなストーリーでした。
複雑な造りで、部屋が増え続け、どこからともなく金木犀の香りが漂う洋館。
訪れてみたいものです。
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