『クジラは歌をうたう』持地佑季子
結婚を控えた30歳になる拓海には、密かな日課があった。
高校生の時に好きだった女の子、睦月のブログを見ることだった。
睦月は12年前に亡くなってしまっているのだが、ある日、ブログが更新されていることに気づく。
ー君は今、何を見て、何を思っていますか? ー
驚いた拓海は、誰がブログを更新したのかを知るため、ずっと連絡を絶っていた高校の同級生たちに会いに行く。
東京で暮らす30歳の拓海と同級生、婚約者の梢。
沖縄で海に囲まれて過ごす18歳だった拓海と睦月。
時間と場所が行き来しながら、海の香りが漂う2人の甘く切ないストーリー。
以下ネタバレを含む感想
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睦月の大切だったクジラの本。
あるページにブログのアドレスが書かれていて、そこばかりを見てちゃんと内容を読んでいなかったのだが、そのページには、クジラは歌を歌うことがあり、真相は未だ謎であるが、求愛のためと書かれていた。
最後のブログタイトルは『私もクジラのように、君のために歌おうか』
そこには、拓海の眠る顔が映っていた。
睦月も拓海のことを好きだったのだ。
だけど、病気で亡くなってしまうから伝えられなかった。
睦月にはなれないだろう30歳。
だけど、30歳になれたら、拓海に気持ちを伝えたいという思いを秘めていた。
だから12年後の30歳となる拓海に
ー君は今、何を見て、何を思っていますか? ー
と予約投稿していたのだ。
ただただ悲しくて切なくて、胸が苦しくて涙が溢れた。
睦月の言っていた、自分の好きな人が、自分を忘れて幸せになれるなら、それでいい。
という言葉がさらっと出てくるのは、日頃から、死についてたくさん考えていたからなのだろうな。
化けて出るよと夫に言っている私とは大違いだ。
切ないけれど、優しいストーリー。
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