『煌夜祭』多崎礼
生物も住めない死の海に浮かぶ十八諸島。
人を喰らう魔物がこの島には住んでいる。
年に1度、冬至の夜に開かれる煌夜祭。
それは、語り部たちが島々を巡って集めた物語を語り明かすためのもの。
語り部のナイティンゲイルとトーテンコフが語り始める。
1〜7話まであり、読み進めていくと、物語に秘められていたことがどんどんと繋がっていく。
人と魔物の、愛と哀しみが入り混じる壮大なファンタジー。
名前が変わりながらも繋がっているため、間があくと名前がわからなくなって頭が混乱してしまうので、あまり間をあけずに一気に読むのがオススメ。
脳内整理のため
以下ネタバレを含むあらすじにご注意。
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・第一話『 ニセカワセミ』
語り部:ナイティンゲイル
語り部のカワセミが、自分を食べようとする魔物に物語を聞かせて空腹を忘れさせていたが、最後に自分の話をして、物語が尽きてしまい食べられてしまう。
・第二話『かしこいリィナ』
語り部:トーテンコフ
ゼント島は大きく実り豊かな島であったが、島主に恵まれず、島主のバクラ・クラン・ゼントは大酒飲み。
隣の小さなヤジー島には幻の酒があることを知り、ヤジー島攻める。
ヤジー島の島主、キリト・クラン・ヤジーは、観測士をしている美しい娘、リィナの作戦で、バクラが亡くなったのだが、跡を継いだシドラ・ウムは、ヤジー島の小麦を納めさせようとした。
またもやリィナの作戦で、シドラは亡くなったのだが、次に後を継いだドナシ・コウは、リィナを引き渡すよう命じる。
キリトはリィナを妻に迎えたかったため、要求を飲みたくなかったのだが、リィナは、住人達の安全を守るために、ゼント島へ渡った。
ゼント島でもリィナは知恵を使い、島を炎で包み、海へ沈めることに成功する。
リィナも一緒になくなったと思われていたが、実は、リィナは魔物であったため、なくなっていない。
・第三話『魔物の告白』
語り部:ナイティンゲイル
生まれつき体の弱かった、ガヤン・ハスだったが、成長するにつれ、だんだんと弱って行き、13歳の時に魔物になった。
愛する人を食べてしまうため、母親とは離され、地下牢に閉じ込められる。
義兄のエナドと、森の老婆のところに訪ねていき、冬至が終わるまで、そこで過ごすこととなるが、老婆に小屋に閉じ込められる。
中には、病気になって森に捨てられた老人がいた。
老人を食べないように頑張っていたガヤンであったが、気を失い、目が覚めると、床が血だらけであった。
冬至が明け、エナドが迎えにきて、地下牢へと戻る。
エナドはなぜ魔物が産まれてくるのか、なぜ人を喰らわなければいけないのかその訳を見つけたいとガヤンに約束し、王島へ行ってしまう。
ある夜、島主の父、スーイ・クラン・ターレンは地下牢にやってきて、母が亡くなったことを告げる、そして、他にも魔物がいるといことを伝えられる。
自分が喰べてしまった森の老女であった。
老女を喰べた時、様々な物語が流れ込んできて、
語り部だった彼女が聞いた話だと思っていたが、実は、彼女の記憶だった。
その後、父は、ジン王が亡くなり、王弟と、王子の王位継承権争いがあり、ターレンの軍を率いて戦に赴き、この戦場を死に場所にする覚悟をしているため、島を守って欲しいと託す。
ガヤンは死なない体を楯にして島を守ろうと決意する。
・第四話『七番目の子はムジカダケ』
語り部:トーテンコフ
捨てられたムジカは、森の魔女と暮らし始める。
冬至の前日、魔女は出掛けて行き、留守の間は誰もこの家に入れるなと言い、銀の短剣を荷物袋に入れ出かけて行く。
冬至の夜は過ぎ、2、3日で魔女が帰ってきて、真新しい血で汚れた服を洗っているのを目撃する。
その翌年の冬至の日も魔女は出かけて行き、その翌年、冬至の前夜に短剣を持って出て行った魔女のあとをつけて行く。
小屋の中に子どもを閉じ込めて森の奥へと行った去ったのを見て、小屋に侵入すると、可愛らしい姫のような子どもがいた。
捨てられたと思った、ムジカは、その子どもを連れ出し、家に連れて行く。
エナド・ウム・トウランに助けを求めて欲しいと言われ、ムジカは、エナドを連れて家に戻ってくるが、魔物であった魔女が食べられてしまっていた。
姫のような子どもも魔物であったのだ。
ムジカはエナドに、養子として迎えられ、クォルンと名付けられる。
・第五話『王位継承戦』
語り部:トーテンコフ
レイブンという語り部(クォルン)は魔物(エン王子)が、物語を聞いている間は、人を喰べずにいられるということを実証する。
クォルンは十八諸島を治める王ジン・クラン・イズーの息子、エン王子の侍従となる。
王は、弟に殺され、次に命を狙われるエンをクォルンは逃すようにするが、スオウ島の島主に邪魔をされる。
エンは即位を表明し、エンを支持するナンシャー島と、反対するアモイ島が小競り合いを始める。
飾り物の王となったエンは、軟禁され、クォルンが無事かどうか気になっていたある夜、水商売風の女の姿をしたクォルンがエンのもとにやってくる。
エンは今まで、自分に付き合って辛い思いをさせてしまったから、見放してくれとクォルンに言うが、クォルンは、どんな犠牲でも払う覚悟があるため、側に置いて欲しいと頼む。
そしてある日エンが狙われた時、ターレン島の島主、スーイ・クラン・ターレン(エナドの義父)がクォルンと協力し、助けてくれたが、スーイは致命傷を負う。
クォルンはスーイにガヤンのことを頼まれる。
スオウ島主にエンが魔物であることがバレてしまい、クォルンは、ボロボロにされる。
飛行船の発明者のランスが助け出してくれ、エンがスオウと共に無謀な戦に出て行ったことを知る。
エンジャ島の軍が王島に上陸してしまっては王子軍に勝ち目はないため、ランスの犠牲をもとに、エンジャ島の上空で、油を積んだ飛行船を自爆させたりしながら、なんとかボロボロになりながらのエンのもとに行く。
スオウは既に戦死していたが、エナドは致命傷を負っていた。
なんとか間に合い、クォルンは初めて、エナドのことを父と呼ぶ。
エンのもとへ行くと、クォルンには無事でいて欲しかったのになぜ来たのか問われる。
クォルンは自分の衣装と交換して、語り部になりすまし、逃げるようと説得するが、女が人前で肌を見せるなと止められる。
クォルンが女だとエンは気づいていて、エンは魔物の身で、クォルンに恋をしていたのだ。
その日は冬至。
ボロボロになり激しく咳き込むと鮮血が溢れるクォルン。
エンに私を喰べて欲しいと最後のお願いをし、クォルンは力尽きる。
その後、王子軍は降伏し、捉えられたエンは炎を浴びて顔もわからなくなっていたが、広場で斬首され生涯を終えた。
クォルンの遺体はいまだに発見されていないそう。
・第六話『呪い』
語り部:ナイティンゲイル
王位継承戦の影響はターレン島にも及んだ。
食べ物に困ったブンシャ島はターレン島の小麦を奪って行った夜、黒騎士の攻撃をうける。
黒騎士はひとりで一晩中兵士たちを殺し続けた。
翌日、再び攻撃にきた、ブンシャしの兵士たちはまた殺された。
黒騎士は刺されても切られても死ななかった。
正体は魔物のガヤンだった。
姉のアイダはガヤンを止めようとしたが、ガヤンは姉を殺してしまう。
ブンシャ軍に捕らえられ、柱に鎖で縛りつけられ、魔物の弱点である、銀の槍で、胸を刺し抜かれる。
ガヤンの身体は徐々に炭化していき死体のようになり、周りの土までもが毒に覆われていった。
1年が経った頃、追い詰められていた島民が槍を抜いた。銀がお金になると思ったからだ。
魔物は死なない。
干からびていても生きていて、槍を引き抜いた者を喰べ、ターレンの深い森へ駆けて行った。
ナイティンゲイルは話終え、仮面を取った。
ナイティンゲイルがガヤンであったのだ。
・第七話『すべてのことには意味がある』
語り部:トーテンコフ
王位継承戦で勝利した、王弟のゼルは、十八諸島の王として戴冠した。
エンジャ島島主の館は、先の大災禍で焼け落ち、幼い跡取り息子のパージ・ハス・エンジャを残してみんな死んでいた。
島民が頼ったのは、森に住んでいた老女であり、パージを引き取り育てた。
海から若い語り部(ムジカ)が引き上げられ、老女のところに連れていかれ、一命を取り留める。
島民は優しくしてくれるが、エンジャ島に大災禍をもたらしたのは、ムジカであったため、罪悪感に苛まれる。
そして老女にそのことを告白し、殺してくれるよう頼むのであったが、死なせるために助けたのではなく、知恵も知識もあるのを活かして、世界を助けて回りなさいと言われる。
自分自身も愛する人の島を守るため、一つの島を沈めてしまったことがあると老女は告げ、リィナの話を始める。
最後の話を終え、トーテンコフは、仮面を外した。
トーテンコフがムジカ(クォルン)だった。
首だけになったエンの元に行ったら生きていて、満足そうに笑っていた。
その姿に絶望し、死のうと思い、海に飛び込んだら、エンジャ島に流れ着い他のだった。
ムジカ(クォルン)はガヤンに、エンを喰べて欲しいと頼む。
そうすれば、エンは苦しみから解放され、ガヤンの中に彼の記憶が残る。
そしてどうかそれを語り継いで欲しいと。
要するに・・・
ナイティンゲイルがガヤン(ムジカが姫のようと思っていた子ども)
トーテンコフが、実は女性のムジカでクォルンであった。
クォルンとエンのお互いを思う気持ちは心を打たれた。
愛が実らなかったのが、とても悲しく切ない。
しかし、人と魔物の愛と悲しみは、語り継がれることにより、永遠に光り輝くのだろう。
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