『TUGUMI』吉本ばなな
東京の大学に進学した主人公のまりあ。
少女時代を過ごした海辺の町に最後の帰省をした、夏の思い出のお話です。
大学進学まで、まりあの母の妹の夫の営む旅館に、まりあと母は暮らしていました。
タイトルにもなっているつぐみは、母の妹の次女です。
つぐみは色白でとても美しいのですが、病弱な身体のため、お医者さんから長く生きられないと言われていました。
そのため、甘やかされ、意地悪で粗野で口悪く、ずる賢く、悪魔のように育ちました。
周囲の人につぐみの考えていることはわからないのですが、意地悪されながらもまりあだけはつぐみをよく理解していました。
「食うものが本当になくなった時、あたしは平気でポチを殺して食えるような奴になりたい。もちろん、あとでそっと泣いたり、みんなのためにありがとう、ごめんねと墓を作ってやったり、骨のひとかけらをペンダントにしてずっと持ってたり、そんな半端な奴じゃなくて、できることなら後悔も、良心の呵責もなく、本当に平然として『ポチはうまかった』と言って笑えるような奴になりたい。ま、それ、あくまでたとえだけどな」
と、まりあに話すシーンは衝撃でしたが、自分をしっかり持っているつぐみの魅力にどんどん引きこまれていきました。
すぐに身体を壊すつぐみですが、心はとても強く逞しいのです。
また、海のある田舎町がキラキラしていたり、切なかったりと美しく表現されているのもこの本の魅力となっていました。
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