『燃える秋』五木寛之
イランのペルシャ絨毯に魅せられた女性の話です。
以下ネタバレを含むあらすと感想です。
グラフィックデザイナーの亜紀は、父親ほどの年の違う男性、影山と2年程、体の関係を続けていました。
別れたいけど別れられずにいたが、今度こそという思いで1人で京都へ行き、そこで、岸田という商社で働く男性と出会います。
彼は、ペルシャ絨毯の魅力を出会って間もない亜紀に伝え、展示会へ連れて行きます。
そこでブルーの美しいペルシャ絨毯を見て虜になります。
後日、突然かけた電話にも関わらず、岸田は名古屋から大雨の中、車で東京まで来てくれ、恋人同士になるのですが、影山からもしつこく連絡がきます。
会わずにいたのですが職場まで、来た影山は、病魔に犯されており、余命が短い事を伝え、亜紀が展示会で見たペルシャ絨毯を購入し、自宅で亜紀に見せます。
岸田が影山とどっちを愛しているのか尋ねている時に、犬がバイクに轢かれたのを目撃します。岸田は「犬でよかった」と言い、亜紀は考えが合わないため、うまくいかないかもしれないと思います。
影山からの連絡は、絨毯を見せてもらった日を最後に途絶え、後日、法律事務所の人から影山が亡くなった事を聞き、イランへの往復航空券を受け取ります。
岸田と別れ1人イランへ行き、ペルシャ絨毯を織っているところなどを数ヶ月かけて見て回ります。
イラン人にとってペルシャ絨毯はとても大切で、どんなに貧しい人達も、手放すことができないものであるのだそう。
手で作られているため、時間もかかる分、高価な物になるので手に入れた1枚は資産となるそうです。
それが、一時期、機械で折られた安価な外国製のカーペットが流入に、貧しい人たちが争いながら購入した事があることなどを教えてもらいます。
また一軒の自宅で、老女と、少女が絨毯を織っているところを見学します。
その少女は大きな、暗い光をたたえた目で、その目の中に、なにか、永遠とでも言えるようなものの確かな光を見たような気になります。
体調を崩した時に、日本から遥々岸田がやってきて、思っていたよりも、亜紀は岸田を愛しているのだと気づきます。
プロポーズされ、結婚することに決めるのですが、岸田は、ペルシャ絨毯のデザインを機械で再現し、販売しようとしているということを知ります。
考え方の違いという事で、結婚をやめ、イランで過ごすことを決めます。
イランの遊牧民は砂漠の土壁の古屋に絨毯を広げて生活するのですが、イラン人にとって絨毯は第二の自然だそう。
イラン高原の大部分は草木のない褐色の世界なので、お花や緑のある楽園、青い水への限りない憧れなども込めて、色鮮やかな大自然の情景を織っているのだと知り、それで、あんなにも美しいものが出来上がるのかと納得しました。
亜紀が展示会で見たペルシャ絨毯はいったいどんな物だったのでしょう。
実際に見てみたいという気持ちに駆られます。
たまにペルシャ絨毯屋さんを見かけますが、高級すぎて、じっくり見せてもらう勇気がないので、展示会にも行ってみたいです。
そして、イランは漠然といつか訪れてみたい国だったのですが、その想いが更に強くなる作品でした。
鮮やかな赤色の布張りの本となっており、ペルシャ絨毯に織り出される赤や、絨毯への情熱のようなものを感じました。
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