『青い鳥』重松清
中学の非常勤講師の村内先生。
村内先生は国語の先生ですが、言葉がつっかえてしまい上手く話すことができません。
いじめの加害者になってしまった生徒や、父親が自殺しまって苦しむ生徒、家族の愛を知らずに育った生徒達の元にやって来てそれぞれが抱える問題や悩みに寄り添ってくれます。
上手く話せない分、本当に大切なことしか言わないため、生徒達は大切なことを教えてもらいます。
本当に話したい事は話さなくてはいけなくて、答えが本当に欲しい時には、訊かなくてはいけない。
本気で喋りたくても上手く喋れない人もいる。
村内先生みたいにつっかえてしまう人や、冗談っぽく笑いながらでない本当の事を喋れない人など。
とても温かくスーッと胸に溶け込むようなお話でした。
こんな先生が本当にいたら救われる子ども達がたくさんいるんだろうなと思いました。
特に印象に残っているお話はカッコウの卵です。
工場で働くてっちゃんは、中学生の頃にお世話になった村内先生を見かけ、会いたい一心で学校に探しに行きます。
そこで在校生と揉め事になり、てっちゃんが学生を殴った、殴ってないと騒ぎになります。
警察沙汰になりそうなところへ村内先生はやって来て2人を信じたらいいと言います。
嘘をつくのは、その子がひとりぼっちになりたくないからつくのだと。
嘘は悪いことじゃなくて寂しい事だと言います。
てっちゃんも昔は嘘つきだったのだと、学生のころの事を話します。
親に虐待を受けて育っていたのに毎日幸せと言っていたてっちゃん。
授業参観や三者面談に両親が来てくれることはなく、プリントを渡すのを忘れたと言ったり、遠足のお弁当はコンビニで買いお弁当箱に自分で詰め直し作ってもらったと言ったり、殴られたり蹴られたりしてできたアザも転んだだけと嘘をたくさんついていました。
流石に様子がおかしいから先生達が問いただしても、嘘を突き通していたそうです。
その嘘は両親をかばっている嘘ではなく、両親に愛されていないということを認めて、打ち明けたらその瞬間にひとりぼっちになってしまうから・・・
だけど今のてっちゃんにはお守りを渡し無事を祈ってくれる人がいる。
嘘をつかなくてもひとりじゃない。
だから嘘をついてないと信じる村内先生に胸が熱くなりました。
嘘って難しい。
人を守るための嘘はいいけど、自分を守るための嘘は絶対ダメと思っていました。
たけど、ひとりぼっちになりたくないから自分のためにつく寂しい嘘はついても責められない嘘だな。
寂しいからつく嘘。
悲しいな。
ちょっと脱線してしまいましたが、その嘘にきちんと気付ける、人の痛みに気付ける大人になりたいと思いました。
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