『モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語』内田洋子

『モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語』内田洋子

ベネチアにとても居心地の良い古書店がある。

店主アルベルトは、客達の小難しい注文を疎まずに聞き、頼まれた本は必ず見つけ出してくる。

店主と客たちの本を介したやりとりも魅力のひとつで、買わなくても寄ってしまう、そんな書店だ。

土日と平日では、客の顔ぶれが異なり、先代につく客と、当代のアルベルトの客で、店主が違えば、客との雑談内容も変わる。

先代は、本のことだけではなく、その著者のこと、図録からは美術展が開催された時の賑わいぶりや当時の世評など、本が読まれた時代のことをよく覚えているため、土日に書店へ行くと、タイムトリップが楽しめる。

店主の修行先を尋ねると、「代々、本の行商人でしたので」とのこと。

先祖は、イタリアのトスカーナ州の山奥のモンテレッジォ村出身で、何世紀にも渡り、その村の人たちは本の行商で生計を立ててきたのだそう。

興味を惹かれた、内田さんは、小さな村の行商人達について調べていくこととなる。

イタリアの最も由緒ある文学賞の一つである露天商賞は、全国の本屋がそれぞれ一推しの本を挙げ、最終候補六作品から受賞作一作品が選ばれる。

その露天商賞の発祥の地がモンテレッジォで、記念すべき第一回目の受賞者は、あの有名なヘミングウェイ。

表紙に惹かれて購入したのだが、モンテレッジォ村の緑に囲まれた風景もなんだかメルヘンで、こんなところから!?と言う驚きが湧き上がる。

 

モンテレッジォの村人たちの歴史を遡る地、石と栗の木しかない小さなその村では、毎年春になると、石と栗を集め、籠に詰め込んで、背負って山を越え谷を越え、フランスやスペインまで行っていた。

籠が空っぽで帰るのは勿体無いため、道中で本を詰め、イタリアじゅうを売り歩きながら帰路を辿ったのだという。

最初に売り歩いたのは本ではなく、聖なる御礼で、聖人の絵の下に書かれた祈祷文を読めない人がほとんどだった中、行商人が説明をしていたのだ。

本を売るだけではなく、神のご加護を届けるための役割も果たしていた。

各地を歩いている行商人の話は、臨場感があり、本には書かれていないことも伝えてくれ、庶民の好奇心と懐事情にに精通しており、一人ひとりにあった本を見繕って届けるようになっていき、「読むということ」が広がっていった。

そして行商人の中には、書店を始める人や印刷、出版業につく人も現れ今の本屋に繋がっていくのであった。

 

何気なく行っている本屋さんや、文庫本の誕生の仕方など、興味がそそられる内容だった。

本が好きな方は、本と本屋さんにまつわる歴史、知るとよりいっそう、本と本屋さんのことがより好きになるのではないでしょうか。



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